Gallaxy



あの雪山での出来事以来、ジェイドの態度に変化があった。相変わらず冷めた性格なのには変わりはないが、以前より柔らかくなったとは感じていた。少なくとも不審な目で見られることはなくなった。
そして、ジェイドは宣言していたとおり、ニーベルングについて調べてくれているようだ。
もジェイドにこの左手の指環のことを説明した。
この指環の声を聞き、この世界に来ることになった経緯も全て。
最初はやはり信じられないと言っていたジェイドも、今はそれが事実であると仮定して、色々調べてくれている。
今日の午前の授業が終わった後、そのことについて話があるからと、ジェイドがの部屋に尋ねてくることになっていた。



がいつものように本を読んで時間を潰していると、部屋をノックする音が耳に入った。
本を机の上に置いて、扉を開ける。そこには予想したとおり、ジェイドが立っていた。本を数冊抱えている。

「わざわざありがとう」
はジェイドに椅子を勧めた。ジェイドのほうも素直に椅子に座る。
「何か・・わかったのね?」
ジェイドがわざわざ報告に来るくらいなのだから、よほど重要な事実が発覚したのだろうとは勝手に思っていた。
しかし、ジェイドの言葉は予想を裏切るものだった。

「何もわからない、ということがわかっただけだ」

「はい?」

は思わず問い返した。ジェイドの言っている意味がよくわからなかった。

「僕はここ一週間出来うる限りの手段を使って調べつくした。そして、わかったんだ。ニーベルングに関する資料は意図的に消されている、ということを」
「それは・・・一体」
「わからない。この世界の歴史では、ニーベルングの指環は消滅したということになっている。伝説と化していて、実在したかもわからないような神話的な存在とされてるんだ」
「けど、指環はちゃんとここにあるよ!」
は左手の指環をジェイドに見せる。
「だからわからないんだ。なぜ、こんなに資料が少ないのか・・。意図的に誰かが資料を残さないようにしたとしか考えられない。関連文献が一冊も存在しないなんて逆に怪しい」
確かに、誰かがそう仕組んだと考える方がしっくりくる。

「残念だけど今の僕に出来るのはここまでだ」
ジェイドがはっきりとそう言い切った。つまり本当にやれることは全てやっての結論なのだろう。そうでなきゃ、ジェイドはこんなに簡単にはあきらめたりしないはずだ。

「ありがとう。調べても仕方ないってことがわかっただけでも十分だよ」
ジェイドがそこまでして調べて駄目なものを自分に出来るとは到底思えなかった。
それに、ジェイドが自分のためにここまで調べてくれた、という事実がにとっては嬉しかった。




「ところで、ネフリーの調子はどう?」
あれから一週間経ったのだが、ネフリーは未だ塾には来ていないようだ。
一度お見舞いに行ったのだが、その時は眠っていて結局会えなかった。
「ああ、一時は出血が多すぎて立つことも出来なかったけど、今はもう元気だ。あんたにお礼を言いたいって言っていた」
「元気になったんだ!あ、じゃあさ、お見舞い行っていい?」
はあれからずっとネフリーのことを気にかけていたのだ。元気になった顔が見たかった。
「別にいいけど」
こうして、はジェイドの家にお邪魔することになった。


ジェイドの家はケテルブルクの中でも裕福な方らしく、その屋敷はかなり大きかった。
玄関に入ると、ジェイドの母親が迎え入れてくれた。そして何度もネフリーのことでお礼を言われて、は少し焦ってしまった。
ジェイドは母親似らしい。よく似ている。ただ違うのは、母親のほうは優しげな顔つきをしている。

「あ!お姉ちゃん!」
玄関での話し声が聞こえたらしく、ネフリーが奥の部屋から顔を出した。その姿が思ったより元気そうでは安心した。
「ネフリー、もう動いて大丈夫なの?」
「うん!お姉ちゃんのおかげで傷も残らなかったし!ありがとう!」

―――か、可愛い!!

今まで無愛想な兄の方としゃべっていたせいか、今は子供らしく笑うネフリーが無性に可愛く思えた。

「せっかくだし、私のお部屋でお話しようよ!」
ネフリーはの手を引っ張る。最初はどうしたものかと思ったが、ネビリムにもここに来ることは言って来たので、はネフリーの部屋で少し遊んで帰ることにした。




ネフリーの部屋は子供らしく可愛らしい部屋だった。
ネフリーは人形遊びが好きらしく、ぬいぐるみをいっぱい持っていた。
二人は人形遊びをして楽しい時間を過ごしていた。
そして、はある物に気付き、首を傾げた。

「あれ?あそこの棚の上の人形・・・」
棚の上に一体の人形が置かれている。可愛らしい女の子の人形だ。
けれど妙だった。
他の人形やぬいぐるみは全部一緒にベッドの上に置かれているのに、その人形だけがぽつんと棚の上に置かれてあった。

は不思議に思い、その人形に手を伸ばした。

「駄目っ!!!」

ネフリーの大声には驚いて人形に伸ばしていた手を引っ込めた。
「ど、どうしたの!?急に・・・ネフリー・・?」
ネフリーの顔が少し青褪めている。何かに怯えるようなそんな目をしている。

「そのお人形は本物じゃないの・・・」
そう言うネフリーの声は少し震えていた。
「本物じゃないって・・・どういう・・・」

「それはお兄ちゃんが作ったレプリカなの!」






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